親族の中で、複数の人が同じ病気にかかった時などに、「遺伝だからしかたがない」「うちはガン家系だから・・・」という言葉を口にする方も多いのではないでしょうか。

病院の問診票にも「家族に◯◯(病名)になった人はいますか?」と尋ねる項目があったりしますし、「病気は遺伝子レベルで親から子に伝わるもの」という前提は広く共有されているように思います。

このように現代の医学では遺伝が原因と考えられている病気についても、その病気の背景にある心理的な要因に目を向けると、別の見方をすることもできます。

それは、子どもが親の生き方や思考・行動のパターンを無意識に受け継いでいるために、結果として、同じ病気にかかりやすくなっているという可能性です。

親の生き方を無自覚に受け継いでいないか?

ルイス・メール・マドローニャ博士(西洋医学メディカルドクター、老人病、精神科専門医)は、自然な病気の鎮静は「思考を変える」と起こると主張しています。私も医者として多くの患者さんとお会いしてきて、病気になる方には共通する「心理的な前提」や「行動・思考パターン」があると感じています。

そして、医者として、表面化している症状に対処することももちろん必要なのですが、それ以上に、「心理的な前提」や「行動・思考パターン」にアプローチすることの重要性ははるかに大きいと考えています。

人の「心理的な前提」や「行動・思考パターン」は、育ちの過程で関わった周囲の大人に大きく影響を受けます。その中でも特に、幼少期までに見聞きしたものが、その人の潜在意識にダイレクトに影響を与えると言われています。

《親の心理的な前提や行動・思考パターンが病気の背景にあった例》

  • 「うちはガンの家系だから、こまめに検診に行くように」という親の口癖を長年聞かされていたために、「私もいつかガンになる人」という心理的な前提が創られていたケース
  • 父親が母親に暴力を振るう姿を幼少期に見ていたことから、「女は損だ」「男に負けてはいけない」という想いや、自分自身の女性性を否定する想いが病気の心理的背景にあったケース
  • 世間体を気にする親に育てられ、自分自身も親の顔色を伺い育った人。愛されるための戦略として、親のいいなり、いい子を演じてきたために、他人基準でしか生きられなくなったことが病気の背景にあったケース

これからの生き方を変えるのは自分自身

「ということは、親のせいで私はこんな病気になってしまったの?」というように、誰かを責めても現実は変わりません。

自分の”問題”を他者のせいにする、つまり被害者の立場を取るとき、人は人生に対する主体性を失います。それは「私は自分で主体的に人生をコントロールしていく人」という前提を自ら放棄している状態です。

「自分を責める思考ぐせ」がある人は、回復の過程で、他者に怒りを向けられるようになることも重要ですが、あくまで一つのプロセスに過ぎません。

病気の背景に、親から受け継いだ前提や思考・行動パターンがあったとして、では、それに気づいた今、自分はどう生き方を変えていくのか? なんのために健康な身体が必要で、健康を回復するにはどんな思考・行動パターンが好ましいのか?

自分の人生を他人のせいにして過去に意識を向け続けるよりも、未来のために「今」の自分のあり方を主体的に選択していく態度が現実を変えていきます。「病気を創るのもやめるのも自分」と言う立場をとってはじめて、病気からのメッセージを受け取ることができますし、生き方を変えていくことができるのです。

病気を自分で終わらせていった人々は、次のような言葉を口にされます。
「病気というショックな出来事がなければ、私は生き方を変えられなかったと思います。今では病気に感謝しています」

たとえ親から無自覚に受け継いだものであるにせよ、自分がこれまで慣れた生き方やパターンを変えていくには、覚悟とエネルギーがいるものです。その覚悟とエネルギーは、主体的に自分の思考や生き方に向き合う態度からしか生まれないものです。