病気に対して心理的なアプローチを行っていく際には、多くの場合、幼少期の親子関係の記憶に紐づく信じこみや自己認識を扱うことになります。幼少期の周囲の大人の関わりは、その人の人生全般に渡り影響していくものです。

ではなぜ、幼少期の周囲の大人の関わりがそれほど重要な影響力を持つのか?というと、子どもの脳と、大人の脳とでは、脳波の状態に違いがあるからです。

子どもの脳波はトランス状態

子どもの脳波を測定すると、6歳頃まではデルタ波やシータ波で占められており、6歳以降になるとアルファ波が現れます。この6歳までの子どもの脳波の状態は、ヒプノセラピー(催眠療法)を受ける時の患者の脳と同じ状態なんですね。

ヒプノセラピーとは、患者の顕在意識(けんざいいしき:自分で知覚できる意識の領域)の活動を休ませて、潜在意識にダイレクトに働きかけていくセラピーです。この時の、顕在意識が休んでいる脳の状態をトランス状態と言います。

ふだんの潜在意識は、いわば顕在意識にガードされているような状態で、外からの影響を受けにくくなっています。それが、顕在意識が休んでトランス状態に入ることで潜在意識がむき出しの状態になります。そこでメッセージを入れていくことで潜在意識に変容をもたらすことができるのです。トランス状態から覚めると、ふたたび顕在意識は潜在意識をガードして、変容後の潜在意識の状態を守り続けてくれます。

トランス状態というと、何か特殊な状態のように感じるかもしれませんが、実は誰もが日常的に出たり入ったりしている状態です。例えば、夜眠りに着く前、朝目覚めた直後、電車などに乗ってぼーっとしている時など、人はトランス状態に入っています。

6歳までの子どもは潜在意識むき出しのトランス状態で、周囲の大人からのメッセージを受け取り、6歳以降にはその状態がそのまま保存されてしまうということです。

幼少期に創られた信じこみは、気づけば手放すこともできる

たとえば長子の方などで、6歳までの幼少期に「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから我慢しなさい!」と言われ続け、大人になってからも「自分の言いたいことが言えない」「自分の欲しいものが欲しいと言えない」体験をくり返す方がいらっしゃいます。

このとき、潜在意識の中に「私は我慢しなければいけない人」「私は自己主張してはいけない人」という自己認識が隠れていたりします。そして、言いたいことが言えず、抑圧した想いが、病気の背景に存在していることは少なくありません。

幼少期に周囲の大人からすり込まれた信じこみに一生気づかず、ふり回され続ける人も入れば、病気を機会に自分の生き方を見つめ直し、生き方を変えていく人もいます。それらの潜在意識にある信じこみは、気づくことさえできれば持ち続けることもできるものです。

あなたは小さい頃、親や周囲の大人に、どのような言葉をかけられていたでしょうか?

その時に採用したルールや世界観で、今も正しいものとして持ち続けているものはあるでしょうか?その中に、病気の根本原因に気づくためのヒントが隠れているかもしれません。