「とにかく、今すぐ、この赤いブツブツを消したいんです」
「熱と咳を止める薬を出してください」

何かの身体症状が出ると、このように対処療法で即座になんとかしようとする人がいます。

しかし、身体症状はすべて、何かの原因があって起きています。その原因に目を向けずに、結果である身体症状だけを抑える対処療法では、その原因はそのまま放置されることになってしまいます。

例えば肌のトラブルにしても、皮膚はホルモンや精神も含めたさまざまな内臓の働きとつながっています。肌トラブルは「身体のバランスが崩れていますよ!改善してくださいね!」という注意を促すクレームとも言えるのです。

企業でも、お客さまからクレームがきたら、まずは真摯に耳を傾けますよね。クレームに真摯に耳を傾けることによって、企業としての重要な課題に気づくこともできますし、何より、お客さまと本当の意味で良好な関係を作っていくことができます。

身体からのクレームも同じです。

身体症状という、身体からのクレームにきちんと耳を傾け、向き合うことで、本当の自分の課題に気づくことができますし、身体とも上手に付き合っていくことができます。

対処療法が悪いもの、と言いたいのではありません。しかし、対処療法で症状の出方だけを鎮めて、その症状が出た意味や身体からのメッセージを考えようともしないと言うのでは、お客さまからのクレームの電話を叩き切ってしまうのと同じことなのです。

心と身体の、もしくは両方の「何か」がおかしくなっているから、身体症状が出ているのです。その「何か」をつきとめて解消しない限り、一時的に症状を抑えても、また似たような症状が出ることになりますし、より大きなトラブルが起こる可能性もあります。

心と身体のすべてのバランスがうまく保たれることによって、私たち人間は、生命を維持して生きて行くことができます。

何かを極端に切り捨てたり、押し込めたり、あるいは加えたり増やしたりすることは、結果として心と身体全体のバランスを欠いていくことになります。

人生の中では、何かのきっかけで、このバランスを崩してしまう時期もあります。それを知らせる身体症状というクレームがきた時に「とりあえずこのうるさいやつを黙らせよう」という性急な対応ではなく、「このクレームにちゃんと向き合おう」「このクレームから、生き方を変えていこう」という姿勢を持つことが大切だと私は思います。