病院にかかったり、その他の治療法を模索・実践している時、ほとんどの人が「病気を終わらせること」を目的にしてしまいがちです。

今、目の前の苦しみや痛みから解放されたいと願うのは、ある意味当然のことではあるのですが、「病気を終わらせること」だけをゴールにしてしまうことは、かえって病気を継続させてしまう方向に作用してしまいます。

「病気を避けたい」と想うとき、脳は病気をイメージする

そのひとつめの理由は、脳のしくみから考えるとわかりやすいのですが、「何かを避けたい」と想うとき、脳はその「避けたいもの」をイメージするからです。

例えば「仕事で上司に怒られるのは嫌だなあ」と想うとき、その上司の姿がイメージで浮かびますよね。それと同じで、「病気を終わらせたい」「病気は嫌だ」と想うとき、脳は病気の状態をイメージしてしまうのです。

脳は、イメージしたものを現実化させるために働く性質があります。つまり「病気を終わらせたい」「病気は嫌だ」と思い続けるほど、脳は病気をイメージして、病気を現実化させ続けるのです。

「何かを避けたい」という想いは、結果的に理想の実現を遠ざけるということを、かのマザーテレサもよく理解していました。それは、彼女が残した次のような言葉に表現されています。

「私は反戦集会には参加しません。しかし、平和集会には喜んで参加します」

「反戦(戦争反対)=戦争をなくそう」という意識そのものが、戦争を継続させる働きがあることに、マザーテレサは気づいていたのです。

健康な身体は、ゴールではなく“手段”

「病気を終わらせること」をゴールにするとうまくいかないもう一つの理由は、病気を終わらせた状態、すなわち健康な身体とは、ゴール(目的)ではなく手段だということです。

健康な身体をゴールにすることは、「手段の目的化」です。ものごとは、手段を目的化するとうまくいきにくくなります。

例えば会社などで「組織の生産性を上げる(目的)ために、全員でミーティングをして改善案を出し合おう(手段)」と言う時に、ミーティングという手段が目的化してしまうことが起きたりしますよね。すると、ミーティングの準備や実施に時間を取られて、かえって組織の生産性が落ちてしまう・・という笑えない結果を招いてしまうのです。

手段の目的化とは、「本当の目的」が明確になっていない時に起こります。本当の目的が明確でないということは、ゴールを決めずに走り出そうとするようなもの。どちらに向かって行けばいいかわからないため、前にも後ろにも進めなくなってしまいます。

健康な身体という「手段」を使って、その先に得たいものや、やりたいことを明確にしておく必要があります。

「なんのために健康な身体を取り戻すのか?」という目的が明確になり、そのプロセスや達成後に予想される葛藤がクリアになると、脳はその手段(健康な身体)を得るために動き始めるのです。

遠回りに見えることが一番の近道である

病の苦しみの中にあるとき、「1日も早くこの痛みや苦しみから逃れるにはどうしたらいいか?」という想いでいっぱいになると「なんのために病気をやめるのか?」に想いを巡らせることは一見、遠回りに感じるかもしれません。

しかし、「一見遠回りに見えることが、実は一番の近道である」というのが世の常です。病気は、今までの自分の生き方や思考が創り出したものであるとするなら、目先の対処療法だけではなく、人生全体という長期的な視点から生き方を変えることが不可欠なのです。

あなたは、なんのために健康な身体が必要なのでしょうか?

その目的を達成することが、どうして重要なのでしょうか?その目的を達成することは、あなたの人生において、どのような意味や価値を持つのでしょうか?

自分自身と深く対話して、この答えを明確にしておきましょう。